一番つまらない話。

ゲームの感想書いたり見た夢を書いたり思ったことを書いてみたり。

8月12日の夢

肩くらいまであるウェーブかかった黒髪の青年がいた。
薄汚れてみずぼらしい格好はしていたが、よく見ると整った顔立ちをしていた。頭もそれほど悪くはなく、字の読み書きもちゃんとできた。昔どこかで教育を受けていたのだろうと彼を知る人は言った。
彼には記憶がなかった。自分が何者かもわからない。青年が今よりやや幼かった頃、山の洞窟を根城にしている山賊の一味に拾われた。

親分は体格の良い無精髭の生えた男で、彼に寝床と粗末な食事を与える代わりに彼のことを容赦なくこきつかった。
でも地図の読み方やロープの結びかたを教えてくれることもあり、こきつかわれいつも腹を空かしボロボロになりながらも、彼はそれほど親分のことが嫌いではなかった。
何より彼にはここより他に行く場所も帰る場所も無かったからだ。

ある日のこと、山賊たちの元にある噂が舞い込んできた。山賊たちが寝床にしている山の隣にある屋敷。そこは、ここいら一帯を纏める地主のものだった。
その家は貴族で、広大な土地と使いきれないほどの財産を持っているという噂があった。その家には長男と長女が居たが、次男がもう随分と長い間行方不明になっていたのだ。
その家の長である老人が死の床に伏しており、昔溺愛していた次男に家督を譲るか、さもなくば家をすべて国へと寄贈すると言い出したらしい。そこで一族は焦り、次男を大々的に探し始めたらしい。
次男の人相書きは山の奥深くにも出回り始めた。それは、山賊の元にいる彼にとてもよく似ていた。そこで親分は一計を案じた――彼をその貴族の次男に仕立てあげればいい!
彼は早速身なりを整えられた。手足と顔を綺麗に洗い、こごった髪に櫛をいれ、肩までの髪をリボンで括った。
襤褸を脱がされ、小綺麗で清潔な格好をし、彼は古く歴史がある教会付きの寄宿学校へと入ることになった。
彼を送り出す時に親分は、彼へと白痴のように振る舞うことを命じた。彼があまりに色々な、貴族らしからぬことを喋ると山賊たちの存在が露見してしまう恐れがあったからだ。
自分達の存在を不用意に喋ることがないようにと親分は厳命し、彼はそれに従うことを選んだ。

寄宿学校へと現れた記憶喪失の青年はすぐに噂になった。それほどまでに人相書きが出回っていたのだ。
行方不明の金持ちの男に似ていると噂は駆け巡り、すぐに貴族の一族の耳にも届いた。長男と長女が早足でやってきて、学校長へと謁見を迫った。
深紅の天鵞絨のカーテンがかかった部屋で、彼は長男と長女へと顔を会わせた。長男たちは一目見るなり彼が次男だと確信した。長男たちは彼へと話をした。以前、馬車が崖から落ちる事故が起こり、次男が行方不明になったこと。彼の記憶喪失はきっとその事故の影響だということだ。
医者も呼ばれたが、彼は本当に記憶喪失だったし、親分の言いつけを守っていつもふわふわと微笑むばかりで一言二言しか喋りはしなかったので、誰もが彼を行方不明の次男だと信じこんだ。
あるいは彼は本当に行方不明の次男だったかもしれないが、彼はちっとも長男たちを自分の家族だとは思えはしなかった。

彼は迎えに来た「家族」に引き取られた。御屋敷は立派だったが古めかしく、壁紙が所々痛んでいるところもあった。
実は金持ちかと思ってた家は没落寸前で、兄も姉も金に汚かった。彼には親切にしてくれたけれどそれには裏があり、彼が家を継いだあとに自分に家督を譲り渡すように言いくるめるつもりだった。
家を継ぐのは祖父に気に入られてたその男だって話になり、益々二人は彼を甘やかし、同時に監視は厳しくなった。

最終的に兄姉間で激しい争いが起こり、それはやがて他の家族や使用人にも飛び火をし、領地の山が燃え家が燃え貴族の屋敷も燃え、譲られるはずだった遺産など最初から全く無い。
飛び火で山が大々的に燃えたので火の手は山賊たちにも迫った。
木々やねぐらの柱が崩れ、動けずに炎に巻かれる山賊の親分の所に逃げたはずの彼は戻ってきた。煤で手足や頬を真っ黒にし、洋服を炎に焼かれボロにしながら
「馬鹿野郎何故戻ってきた」親分は彼を怒鳴る。彼は首を振って親分のとなりに腰を下ろした。
「僕にはここにしか本当の居場所がないから」

って心中するというBLエンドで謎の夢だけど面白かった。